「ウィンナー」はウィーン風という意味
ウィンナーコーヒーの「ウィンナー」は、ソーセージの名前ではありません。ドイツ語のWiener(ヴィーナー)、すなわち「ウィーン風の・ウィーンの」という意味の言葉です。ウィンナー・ワルツや、ウィンナー・ソーセージと同じ語源にあたります。
おもしろいことに、名前の由来となったウィーンには、「ウィンナーコーヒー」あるいは「ヴィーナー・カフェー」という名前のコーヒーは存在しません。これは、いわば日本でつけられた呼び名なのです。
原型は「一頭立ての馬車」アインシュペナー
では、ウィーンには何があるのか。日本のウィンナーコーヒーにもっとも近いのが、アインシュペナー(Einspänner)と呼ばれるコーヒーです。グラスに注いだコーヒーに、ほぼ同量の生クリームをたっぷりと載せたものです。
アインシュペナーとは、ドイツ語で「一頭立ての馬車」を意味します。かつて、馬車の御者(ぎょしゃ)が、寒い中で暖を取りながら飲んだことに由来すると言われています。手綱を片手に持ったまま、もう片方の手で飲めるよう、クリームが冷め防止のふた代わりにもなっていた——そんな情景が浮かびます。
日本での歴史
この名前を冠したコーヒーを日本で初めて提供したのは、東京・神田神保町の喫茶店「ラドリオ」とされています。同店の常連だった東京大学の教授が、ウィーンに留学した際に見たコーヒーの話を参考に、開発されたものと伝えられています。
ウィーンの馬車の文化が、はるばる日本の喫茶店で「ウィンナーコーヒー」として根づいた。一杯の飲み物の背景には、こうした文化の旅路があります。
松尾珈琲のウィンナーコーヒー
当店のウィンナーコーヒー(¥700)は、有機栽培フェアトレードのブレンド豆に、しっかりと泡立てた生クリームを載せています。おすすめの飲み方は、あえて混ぜないこと。
- はじめは、冷たいクリーム越しに、熱いコーヒーのほろ苦さを。
- 次第にクリームが溶け、甘さとコクが混ざり合う変化を。
- 最後は、底に残った甘いコーヒーを名残惜しく。
一杯のコーヒーの名前をたどると、遠い国の暮らしや風景に行き当たることがあります。ウィンナーコーヒーは、ウィーンの寒空と馬車の御者の手のぬくもりを、今に伝える飲み物です。
あわせて楽しむ
ウィンナーコーヒーは、それ自体が甘いので、塩気のあるいぶりがっこのクリームチーズ添え(¥350)や、香ばしトースト(¥400)と好相性です。甘味をさらに重ねるなら、クレームブリュレ(¥700)とご一緒に。
秋田杉の店内で、ゆっくりとクリームの溶けていく時間をお楽しみください。